最高裁判所第三小法廷 昭和45年(オ)552号 判決 1971年10月26日
上告人
原田清作
代理人
星野民雄
被上告人
学校法人
鴻城義塾
右特別代理人
江藤英夫
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人星野民雄の上告理由について。
私立学校法による学校法人の代表権を有する理事の職務の執行を停止し、その職務代行者を選任する旨の仮処分がなされた場合、その地位は仮処分によつて創設された一種の公職であるが、職務代行者は個人として学校法人に対し理事と類似の権利義務および責任を有するものというべきであるから、学校法人と理事職務代行者との利益相反する事項については私立学校法四九条、民法五七条が準用されるものと解すべきである。しかし、被上告人の代表者である理事長の職務代行者として選任されている林靖について、同人が以前被上告法人の役員であり、上告人の理事長辞任登記手続をするについて不正行為をしたとの上告人主張の事実があつたとしても、そのことから林が被上告法人を代表して上告人との間の本件訴訟を追行することにより、被上告法人自体の利益を犠牲にするおそれが客観的に存在するとはいえず、被上告法人と林との利益が相反するとはいえない。本件については、右法条により特別代理人を選任すべき場合にはあたらず、したがつて、江藤英夫には特別代理人として被上告法人を代表する権限がなく、上告人において他に正当な被上告法人の代表者を補正しない以上、上告人の本件訴は不適法というべきである。そして、本件訴訟に所論当事者参加の申立がなされたことにより、不適法な本件訴が適法になるわけではないから、本件訴を分離して却下することを妨げない。したがつて、江藤に被上告法人を代表する権限がなく、上告人において他に正当な被上告法人の代表者を補正しない以上、上告人の本件訴は不適法であるとして却下した原審の判断は、結局、正当である。論旨は理由がない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(天野武一 下村三郎 松本正雄 関根小郷)